いつかくるとわかってたその日

 

選ばれたのは、僕じゃなかった。誰がどうみても誰がどんなに優しくても疑う余地などなしにそう思われてしまう、その日が今日来ました。

 

たった一言の「ごめんね」だけで、彼女を振り向かせることができる。たった一度会うだけで、その先ずっと彼女のことを虜にさせる。

彼氏ってそんな存在なんですね。生半可な気持ちじゃ背負えないんですね。そう思わされるそんな日が来ました。

 

決して僕は彼女と付き合いたくて、今いる彼氏の存在を無視して、彼女と連絡をとって会ってた訳ではないです。もちろん、彼女にとって彼氏といることが一番の幸せであることは重々承知した上で、いつか捨てられる日が来るとわかった上での行動を取っていたつもりでした。

 

でもいま思えば、裏垢のフォローも、心の中の暴露大会も、本当はこうしたいって願望を伝えることも、全部全部簡単に消せる思い出じゃなくなっていました。「し」と打てば、一番最初に予測変換に名前が出てきます。それだけこの短期間で彼女の名前を文字にして、声に出して、呼びました。

 

彼女に名前を呼ばれるのが嬉しかった。彼女の隣を歩けることが嬉しかった。彼女の悩みを聞けることが嬉しかった。彼女の匂いを嗅げることが嬉しかった。彼女にとって良い人でありたかった。ただそれだけで満足できると思ってた。でも変わった、変わってしまった。自分が一番の存在だと錯覚してしまった。彼氏と別れて自分とくっつく未来を考えてしまっていた。俺ならそんな思いさせないのに、俺ならもっとこうするのに、そんなことばかり考えていた。

 

でも、現実は真逆だった。彼女の心に空いた丸い穴は、三角の僕では塞ぎきれなくて、丸い彼氏の存在じゃないとちゃんと塞ぐことができなかった。彼女の欲しがる言葉を、彼女の喜びそうなことを、全部やったつもりだった。全部してあげようと考えていた。でも、行動じゃなくて行動する人間が違ったらどんなに合ってても、採点者の彼女には決して響かなかった。模範解答を持つ権利が僕には無かった。そもそも解答用紙も配られていない。たった一枚の解答用紙を持つ権利は彼氏にしか無かった。

 

また会いたい、会って話をするだけ、会って笑い会うだけ、そのだけって、またって表現も間違ってた。僕にはそんな言葉を使うべき理由がなかった。気を遣わせていたのは僕なのかもしれない。同情されてたのは僕だったのかもしれない。

 

彼女が歌う曲を聞くたびに、匂いを顔を仕草を笑顔を声を全部思い出す。立派に恋をした。無謀という言葉が足りないほどに残酷な未来に目をつぶって、目の前のわずかな光ばかりに目を向けて楽しいから幸せだからと自分に言い訳をして彼女だけを見つめた。彼女のことだけを考えた。

 

彼女にとっては当たり前のことだったんだろうか。思わせぶりな態度はあった。わずかに揺れた瞬間もあった。彼女にとって僕はなんだったのだろう。ふとそう思う瞬間が、ふと振り返ってしまう自分が、醜くて情けなくて仕方ない。

 

I think my life must be a tragedy.

If it is possble,I wanna think my life is a comedy someday.