ザ・Sunday

 

日曜日は二人でお出かけをした日でした。あの子の買い物に付き合って、カラオケに行って、公園で話をして帰るのです。

僕は公園で話をする時間が一番好きです。彼氏の話も友達の話も学校の話も家での話も、全部話してくれるのが嬉しいです。聞いてて楽しいです。

ただ一つだけ、自分の話をした時に、あの子の目は点になって、上の空を見つめていました。その瞬間は楽しさを超えるほどに虚しい悲しい寂しいという感情全てを同時に感じさせます。自分の欲がどんどん出てくるのが怖いです。「そんな人だと思わなかった」そう思われるのが一番嫌です。関係がなくなるのが一番嫌です。一番じゃなくて良いから、サブでいいからいつまでも話をしていける関係でいたいんです。

 

 

化粧品を見る時に、「あ、これも持ってる」「あ、これも」「あれもこれも」って教えてくれます。どんな反応すれば良いのかわからないです。周りにいる女性のお客さんは「なんだこいつ」みたいな顔で見てました。それは僕の好きな子です。心の中ではそう答えました。どんな化粧品を使ってても可愛いんだ、そう付け足しておきました。彼女はどんな気分だったんだろう、そんなことばかり考えています。

シャンプーとかヘアオイルとか色んなものの匂いを嗅いで、「これ好き」「これいや」「誰かの匂い!」そうはしゃぐ君が本当に天使のようでした。良い匂いの空間にいても、彼女から放たれる良い匂いが一番好きでした。"このまま時が止まってくれれば良いのに"なんてくさいことも考えてしまいました。

 

カラオケに行くと、彼女は普段の可愛くてあどけない姿とは一変して、凄まじい声量と精密な音程感覚で次々と僕の歌の上手い世界を更新していきます。「これ歌えないけどいい?」そう聞くのは何故なんだろう。歌えなくても十分に歌えているのに。本当に歌が上手。歌ってる歌全部が好き。歌も好きになっちゃう。

 

これから冬になったら、公園で何時間も喋ることが出来なくなるのかなって思うと同時に、自分の事にも集中しなきゃなって思いが交錯して複雑な思いです。自己中心的に、極めて利己的に生きてきたと思ってた自分が、いつのまにか彼女を優先するようになっていました。彼女は「ラインの返事が早いのは助かる、暇つぶしだけど」「あ、悲しい?」なんて上手に転がしてくれます。悲しくても悲しいなんて言えないよ。プライドが高いからね。どんな事をしていても彼女の事を考えるようになりました。これ好きかな、あれ好きかな、これ似合いそうだな。彼氏になれたら全部やってあげるのに理由がいらなくなるのに。今はやる事全てに理由が必要だし、相手の機嫌を伺わないといけない。多分彼女も少しは僕のことを考えてくれてるはずなんだけどね。はずね。はず。

 

でも、二人で会った時に僕だけが楽しんでて、彼女はやっぱりこうやって出かけるのは彼氏としたいんだろうなって考えると、本当にいてもたってもいられなくなって胸が張り裂けそうな思いが止まらなくなるので、それだけは考えないようにしています。でも、顔に出てるのかもしれません。彼女は知ってても隠し通す上手さを持ってます。頭が良いです。賢いです。

 

彼氏になれない理由があるとしたら、それは彼女に彼氏がいることじゃないのかもしれない。僕自身に問題があったとしたら、それは僕一人じゃ気付けない事だろうし、それを直したとしても彼女とは付き合えない気がする。

 

彼女が見てるのは僕じゃないんだなって、フィクションみたいな感覚を覚えてしまいました。

 

また会えたら嬉しいな